衣替え

私の母は、町の真ん中にあった旅館の娘。
一応日本旅館でしたから、四季折々を大切にしていたそうです。
母は、それを大切にしながらお嫁に来ました。

そんなわけで、季節の変わる頃は、家の中の衣替えが大変でした。

衣装の衣替えは当たり前。

靴の衣替え(変な言い方ですね‥)は、下駄箱掃除から始まります。
玄関いっぱいに並べられた靴をきれいに磨きます。
季節限定靴は、なかに新聞紙を丸めた物を入れ新聞紙に包んでしまいます。
もちろん新聞紙にマジックで、何の靴か分かるように記載してから!

掛け軸を替えます。
まずは、床の間の掃除から。
小槌を持った大黒さんをよっこらしょと抱えて動かすことからスタート。
次に掛け軸を外し丁寧にほこりをとり、木箱にしまいます。
そして次に来る季節の掛け軸を出します。
お嫁に来るときに母が持ってきた掛け軸。
戦災でほとんど焼失してしまった中、残った大切なものです。

次は、今のように冷暖房器具が整っていなかった長い冬の寒さを耐えさせてくれた炬燵をかたづけます。こたつ布団を干して汚れをとります。
こたつは物置へ。
今みたいに年中使えるタイプの炬燵とは異なり、これまた冬限定使用。

そして内扉を「須戸」に替えます。
これが大仕事。
もともと和室と和室を仕切る襖ですから、重いのです。
それを全部はずして、二階へ運びしまいます。
そして替わりに夏用襖「須戸」に。
天袋まで「須戸」ですから、これをするともうクタクタです。

最後にきたのが「花ござ」
畳の部屋に敷くござのことです。いろいろな模様の物がありステキです。
だいたい3畳分くらいあります。
きれいに畳をからぶきした部屋に敷きます。
もちろん夏が終わると、この「花ござ」はきつく絞ったぞうきんで拭いて、乾拭き、干します。
そして湿気虫除けのため新聞紙にくるんでしまいます。

これが母の「家の衣替え」です。
いかがですか?
大変でしょう。
でも、使えない子どもをうまく使いながら母は一人でこれを続けていたのです。

さて、ここで「衣替えの極意」をお教えします。

それは
「しまう」時にあります。
とにかく
「丁寧に手入れをしてからしまう」
ということです。

これを守れば、つぎの季節が来ても
楽にできるそうです。

当たり前のことなのですが、これまた難しいことでもあるのですよね。

我が家も、さきほどようやく「花ござ」を出してきました。
もちろん母の教えに則りしまっていたので、とても楽に敷くことができました。
by hahamego | 2010-06-14 14:11

手枷足枷で我が道をなかなか行けないショボイ母の日々のため息的ひとりごと。

by hahamego
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